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まちなかの本の森 

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アイデンティティって何でしょうか?

 絵本から「私らしさ」を考える機会になることを願って開催中の「絵本ブックフェア『わたしは私』」にちなみ、同じ題名の児童書『わたしはわたし』をご紹介します。

 白人警官が黒人の子どもを殺した事件で、目撃した真実を証言したトスウィアの父は黒人警官です。同僚の犯した誤りをなかったことにする警察内の暗黙の了解と、自分の信じる正義との間で苦悶した末の証言でした。しかし、そのために、妻と2人の娘キャメロンとトスウィアの4人は生命の危険にさらされ、「証人保護プログラム」によって、別人として別の場所で暮らすことになるのです。

 今まで積み上げてきた生活、友人、写真も服も、過去の経歴の全て、名前さえも「なかった事」にされ、まさに自分を失ってしまう一家。決断した本人である父でさえ、その父の正義を信じて連れ添う母でさえ、娘たちの困難の助けにはならない。4人それぞれが、つきつけられた鋭いナイフのような問い―「自分が何者であるのか」という問いに、永遠のように長い時間を費やし、傷つきながら向き合っていく姿が描かれます。

 アメリカに「証人保護プログラム」というシステムがある事をご存知の方は多いと思います。映画や物語にも登場し、主人公が重要な証言を得て大活躍、事件はみごと解決。そして証言者にこう言う「大丈夫、あなたは証人保護プログラムで守られます」。大団円。
 しかし、この本を読んで、そんな簡単なことではない、悪と戦う主人公に目を奪われ、「保護」という言葉に惑わされ安心してしまうことに気づけなかったことを、思い知らされました。

 日本で言えば中学生のトスウィアが語るこの物語は、小学校高学年~中学生を主な読者と想定されていますが、文章の難易が内容と比例しないことは言うまでもありません。大人のかたにもお薦めできる1冊です。キーワードは、“hush”と“witness”でしょうか。
 ぜひ!

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『わたしはわたし』
ジャクリーン・ウッドソン/著 さくま ゆみこ/訳 鈴木出版 J/ウ
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